JR中央本線「上諏訪」駅の東口から南に下ったあたり、末広・小和田地区周辺に広がる“新しい雰囲気のする古い街”が注目されていると聞き、2024年9月18日(水)に行われたまちあるきイベント「スワ・マチ・ミライ」に参加してきました。

リーディングしているのは、小和田で古材ショップやカフェを営む、株式会社リビルディングセンタージャパン、通称「リビセン」。
“レスキュー”と称して古民家から古材や古道具を引き取って販売しながら、古い建物のリノベーションを手掛けています。

2023年からは、「リビセンみたいなお店やるぞスクール」という、古民家から古材をレスキューする方法、それを販売する古材ショップ経営のノウハウなどを教えるワークショップを開催。
全国に増えている古民家にある古道具や雑貨類をレスキューして販売する仲間の輪を広げているのだそうです。

同じ2023年には、自社のあるエリアの古い空き物件を借り受けて自らリノベーションし、テナント募集・入居・開業支援まで行なった「ポータリー」をOPEN。

かつて観光温泉街として賑わっていたが、温泉街の衰退化・人口減少によって、近年はすっかり寂れて駅前からの商店街はシャッター街になっていた上諏訪の街。
商店が立ち並んでいたエリアをリビセンがリードして、オーナーさんから引き受けてリノベーションしながら、入居事業者を募集して入居・開業までお世話をするテナントリーシングを実施。
1軒また1軒と、リノベーションしたお店が開いて、人が訪れる街になっていく。

それが「リノベーションまちづくり」なんですね。

 <↑上諏訪駅から続く昭和レトロな街並み。この通り沿いはほぼシャッター街だったが、リビセンの主導で少しづつリノベーションされテナントが入って開店している。>

実は今回のまちあるきイベントは、諏訪市役所の主催。リビセンの動きに注目した諏訪市役所建設部都市計画課が、空き物件紹介をする部署を作ってテナント入居希望者をご案内したり、「上諏訪駅周辺まちなか未来ビジョン」を作り、住民の皆さんと勉強会を開催したり、一部の街路整備をしたり、街のアイコンとなるPR看板を設置したりと、民間の動きに行政が連動する動きができているのも興味深いお話でした。

<諏訪市がまちづくりの一つとして取り組んだデザイン看板。>

<街路を広げる整備をしたら商店が消え、人の流れも消えてしまった・・・とのこと。>

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◉リビルディングセンタージャパン(以降「リビセン」)代表・東野唯史さん:

僕たちがこの街でやっているのは、業種を想定して建物のリノベーションを先にやって、そこにピンポイントでその業種の出店事業者を募集する呼びかけをSNSでやるという手法です。

出店開業したい事業者さんに対しては、僕たちが事業収支計画を作ってこのくらい利益が出そうだと示してあげて、検討してもらう。
例えば地元の信金さんに融資を申し込む時も、事業収支計画をあらかじめチェックしてあげたりも。
だから出店に踏み切りやすいだろうと思います。

こうしたリノベーションまちづくりのヒントをもらったのは、黒磯市のカフェSHOZOさんからだと思います。
主に地方のカフェブームの先駆けですが、全国からカフェ好きな人がやってくる街になっていますし、移住してお店をやる人もいます。
行政のサポートがなくても街が活性化している良い事例だと思います。

◉Local stay: リビセンさんが上諏訪でリノベーションまちづくりをやり始めたきっかけは何でしょうか。

◉東野さん: 僕たちは、全国でリノベーションしてお店を作ってきましたが、上諏訪でやっているのは、ここで暮らしている自分たちの暮らしを豊かにしたいという思いでしょうか。
素敵なお店があったら行けるじゃないですか。
四軒長屋になっている建物をリノベして、テナントが集まっている「ポータリー」というお店を作りましたが、それはもう自分たちが行きたいから作ったのだと思います。
ここが、リビセンにとって物件ありきでお店を募集する最初の仕事になりました。

<商店街から外れた住宅街にあるポータリー。リノベした内装は木材を使ったぬくもりのある空間で居心地良さそう。建物の外のウッドデッキではマルシェのようなイベントも。賑わいを広げるため、隣の建物をリノベ計画中だそうです。>

お店を出したい人は、どうしても建物のリノベーションが出店のイニシャルコストになるじゃないですか。雑貨店で100万、飲食店だと500万とかかかります。
そこを我々がやってあげると、その分が浮いて、資金を運営コストに回せるので、出店のハードルが下がるわけです。
建物がリノベーションされていると、テナントは募集しやすくなります。
そのお店にニーズがないと経営は難しいですが、似たようなお店が集まっている街になると、そうしたお店が好きな人たちが集まってきてくれる。
だからニーズが生まれるんです。

事業者にとって事業が成立することが幸せだと思うんですが、収支計画が成り立っていないと出店はお勧めしません。
地に足のついた事業をやって欲しいので。
このポータリーをリノベする時に、すわリノ=株式会社すわリノベーションという会社を作りました。
リビルディングセンタージャパンと、地元の不動産会社・株式会社サンケイ、諏訪信用金庫との3社で立ち上げたまちづくり会社で、ポータリーが第1号事業になりました。

末広地区で手がけたリノベーション物件では、どうしても入居してほしいお店があって、経営者の方は友人でもあったのですが、お願いして出店してもらいました。
それが、「わざマート」さんです。こういうお店が自分たちが暮らしている街にあったらいいなと思って。
今は、マイクロホテルがあったらいいなと思って、SNSで運営者を募集しようとしているところです。

<どうしても来て欲しいと誘致した「わざマート」は、ナチュラルな雑貨や食品を扱っているお店。>

<すぐ近くにあるカフェも、リビセンのリノベ物件。>

<わざマートがある通り。この通り沿いにホテルを作るのだそうです。>
<リノベ物件の一つの本屋さん。ドアは、かつて街の人たちに愛されていたが火事で消失したお店のものを譲ってもらい使用。そのお店の歴史を残したかったのだそうです。>

◉Local stay: 東野さんが上諏訪に移ってきたきっかけは何でしょうか。

◉東野さん:

全国を旅しながらリノベーションの仕事をしていたんですが、下諏訪にあるマスヤゲストハウスさんに泊まりながらリノベーションさせてもらったことが、ここに移住したきっかけです。
その滞在中、僕の奥さんの体調がすごく良かったんですよ。
それで、このあたりに住めたらいいなと思って、上諏訪のあたりで物件がないかなと思って不動産屋さんに行ったら、3日目に見つかった物件が、今のリビセンがある建物です。
トントン拍子だったんです。それが2018年で、今年で7年目になります。

<リビセンの本社とショップがある建物もリノベ物件。>

<リビセンのショップは、使っていた人の思いが詰まった雑貨や家具たちが並び、なんだか愛に溢れていました。>

<リビセンの近くの住宅街には、歴史を感じるこんな建物も残っています。>

リノベーション物件に入居してくれるのは、ほとんどが外の人です。まちを見に来てくれたり、新しいお店に来てくれる人も外の人が多いですね。
僕たちには、街の人たちと連携しなくちゃとか、一緒にやらなくちゃという意識はないんです。
でも、このエリアで新しく開店したお店は30軒くらいあるらしいので、街の人たちの新しい動きにも繋がっているとは思います。
リノベーションまちづくりの効果じゃないかなとは思っています。

<まちあるき後のトークイベントで、リノベーションまちづくりについて語ってくださった東野さん。>

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自分たち自身の暮らしを豊かにしたいという思いで、自分たちが欲しいお店を作り、担い手に向き合って、この街に来ていただく。
その当事者意識の発想が、熱のこもったリノベーションまちづくりの源泉なんですね。

ゆったりした時間の流れを味わえる雰囲気のこの街に、そして居心地良さそうなお店に、改めてゆっくり来たいと思います。

東野さん、諏訪市役所の皆さん、ありがとうございました。

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